14人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらくの間、呆然とベッドの上にいると、いきなりドアが開いた。お袋が飛び込んできた。
顔の筋肉を一切動かさず、首の動きだけでお袋を見た。ノックだとかで怒る気力が起きなかった。
大変だよ。声が出ないよ。俺のせいだよ。ベッドの上で口を動かす。
お袋はなにをそんなに慌てているのか、俺の肩をつかんだ。
そして叫ぶ。
「 」
…………あれ?
なんにも聞こえて来なかった。テレビの消音ボタンを押したようだった。
お袋が肩を揺らす。口は動かしたまま。
だが、声は、ない。
「 」
また口が動く。やはり声は無い。音は聞こえているから、鼓膜は正常のはずだ。
とすれば。……どういうことだ?
ガクガクと小さく揺れる視界の中、ちらちらと青が下に見えた。
ゴミ箱の色だ。
最初のコメントを投稿しよう!