言葉のゴミ箱(転)

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…………変だな。 シャーペンが動かない。 ……おかしい。 文字の書き方が、分からない。 頭に文字の形は浮かぶ。だが、いざ紙に写そうとするとまったく手が動かなくなる。 ……なんでだ? 焦ってるからか? ど忘れしてるだけか? お袋が俺からシャーペンを奪った。いつまでも筆談を始めない俺にもどかしくなったのかもしれない。紙に芯をつけて、そして、俺と同じように固まった。 お袋も、文字が書けない。 嫌な予感がした。最悪だと思っていた考えに、もっと先があることに気が付いた。 そういえば、白紙のルーズリーフなんて引き出しに入ってたっけ? この引き出しって書き終えたノートを入れるところじゃなかったっけ? 自らが勝手に決めつけた“最悪”を抜け、さらに前に進む。本当の最悪に当たるまで、そう時間はかからなかった。  
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