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頭の中の“最悪”に手を伸ばす。現実では、文庫本に指が触れた。
背表紙に文字がない。開いてみると、さらに酷かった。どのページも白紙だった。
震える手で、今度は漫画を一冊手に取った。
絵はちゃんと残っていた。なのに、題名、作者名、会社名全てが消えている。
手の震えが全身に行き渡った。
見たくないと体が拒否をする、脳が無理やり命令を下して漫画を開いた。
吹き出しの中に文字がない。絵はあるのに文字が一つもない。吹き出しの中は空。
ああ……やっぱりそうか。
やっと自分がやってしまったことの重大さに気づいた。
言葉なんて必要ない。
言葉には文字も含まれるのだ。
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