ピアノ

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それは、とてもとても美しい笑顔でした。 「もし、来年のこの日、ここで演奏できたら、また聞かせてください。」 そういうと、 「できない約束はしないわ。」と言って、また笑顔を見せました。 女の人は、振り返りピアノを後にしました。 その後ろ姿は、とても寂しそうでした。 抱きしめてあげたいと思いました。 ぽつんと一人、ピアノの前にたたずみ、私は訳もわからず、泣き崩れました。 その数ヶ月後、彼女はがんのため、亡くなったと聞きました。 全くピアノの弾けない私は、エリーゼのためにを練習しました。 そして、去年と同じ日にここで、彼女と彼女の娘さんのために、エリーゼのためにを弾きました。 おわり
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