始章

30/51
前へ
/77ページ
次へ
「ふむ………」 わたしの質問を聞くと山下先生は何か悩みだした。 たぶん話していいかどうか悩んでいるのだろう。 「お前は知っておいたほうがいいだろうな……」 山下先生はそう言うとわたしにいろいろ説明してくれた。 5年ほど前、魔法研究で世界中に名を知られていた魔法使いが逮捕された。 彼は孤児院をひらいて子供を集めるとその子達を使って人体実験をしていたのだ。 警察はそのことに気づくまでに5年かかってしまった。 いや、正確には最後にやっと気づいたのだ。 警察はその孤児院から叫び声等が聞こえるという通報を受けて現場に向かった。 結果として警察は後処理しかすることがなかった。 孤児院の中に入るとそこには部屋のすみのほうで泣いている女の子と全身を血で赤く染めて放心状態で立っている男の子がいるだけだった。 「その子供が河本と竹中だ。俺は魔法使いの家で起きた事件ということで警察の助っ人としてあの場にいて実際に見ている」 「人体実験をしていた人達はどうなったんですか?」 わたしは震える手を握りながら質問する。 「主犯の魔法使いは一命を取り留めたがほかのやつは全員死んでいた」 さらに山下先生は続ける。 「そいつらを殺したのは河本らしい。さらに竹中は人体実験の唯一の成功体だそうだ」 「だから先生は彼らを魔獣に襲わせたんですか?彼らの実力が知りたいという理由で」 「そうだ。お前も知っているだろう?あの話し。俺はやつらを推薦しようと思う。だが俺はあいつらの全力を知らないし何よりあいつらには実績がない。だからこのような指示を出した」 なるほど……たしかに魔獣に襲わせるのは必要かもしれない。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加