始章

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☆☆☆ 「ヒデキくん離してっ、ユートを助けに行かないと!」 あたしはそう言ってヒデキくんの腕を振りほどこうとする。 だけどヒデキくんの腕はあたしを捕まえたまま離れない。 「美鈴ちゃん、今の僕達にできることはない。だから早く逃げるんだ。ユートも自分は大丈夫って言ってたでしょ?」 あたしはその言葉を聞いてすごく腹が立った。 なんて情けないんだろう! 「ユートはあたし達が逃げるのをやめないようにそう言ったをだよっ、あんな化け物相手に大丈夫なわけない!早く助けに行かないと!」 「行って何ができる!」 あたしはヒデキくんの剣幕にのまれて黙ってしまう。 「僕だってユートを助けに行きたいよ!でも僕は弱い………あんな化け物相手に何ができるって言うんだ!?僕達が助けに行っても足手まといにしかならないんだよ!」 ヒデキはそこまで言うと黙ってしまう。 悔しそうに手を握りしめて……… だからわかってしまう。 ヒデキくんが自分と同じ、あるいはそれ以上にユートを助けに行きたいんだということが。 そう思うともうなにも言えなくなる。 「二人共、何をほうけている。私達にはしなければならないことがあるだろう?」 そんなあたし達を見てリンちゃんがいう。 「やらないといけないことって?」 「とりあえず山下先生を捜そう。そして河本君達を助けてもらうんだ。」 ………! あたしは自分でユートを助けられないからってなにを落ち込んでいたんだろう。 自分で助けられないなら助けられる人を呼べばいい。 そう、あたしは自分のできることをやればいい。 「そうだね、たしかにあたし達はやらないといけないことがあった」 ユート………まっててね。 すぐに助けに行くから。 「山下先生を捜しに行こう」
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