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人里離れた、雑木林に囲まれた所に建てられてある建物。立派とは言えないが、此所には3人が寝泊まりしている。その近くに流れる川の河川敷で野草を摘んでいる鮮やかな赤髪。
どうやらお腹が空いたらしく、野草を充分に摘んだから土手を駆け上がって行った。ただいまーと言いながら母屋の台所に直行し、食糧庫の冷えている場所を視認する。…が、お目当ての物が無いと解るとだだだ…と今度は居間へと直行する。
「…ウチが取っといた梅入りおむすび、誰食った?」
「知らネー」
「ん?
俺は鮭入りしか食っとらんで?」
「…… 、何でいつも勉強嫌いなあんたが文書読んでんの?」
「ギクッ)い、いや…たまニハ文字の一つや二つは見といた方が良いかな、と」
「ふーん…逆さまの文字読んで、勉強になるんだ」
「いっ!?
あ…ヤベッ。ぁー…えと、ほら……たまたまダ」
「そっか、たまたまか。
それじゃベタにご飯粒が口に付いてんのもたまたまなのかな?」
「ああ、たまた…え?
…ボソ)ヤベ、本当に付いてルヨ」
「犯人は手前ェかこの食い逃げ野郎がああ!」
「ちょっ、落ち着げボァっっ!」
「いつにも増して由生(ゆうき)の右ストレートが綺麗に決まったなぁ」「いや …感心してネェで、ヘルプ!
あだだだだだだ!!」
「人が真面目に鍛練してんのに呑気に昼寝してたあんたが食う権利はこれっぽっちも無いんだぞ、バカ !」
「悪いっテバ!
謝るから、どこからともなく出したその出刃包丁…仕舞えって!」
「殺す!」
「おー、久々に由生が本気出したわ。
めでたいから、今日の夜飯は赤飯にしよか?」
「めでたくねーカラ!」
セピア色のフィルターが張られた様な光景。どことなく現実味が無い。
『……あー成る程、夢か』
瞼を開けて入ってきた日射しが、その懐かしい光景が夢だと言う事を物語った。
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