今宵、悪魔の眠る城で

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   なら何故、こいつは優介を選んだのか。誰でも良く、ただ気まぐれでそうしただけなのだろうか。それなのに私が散々わめくから、うっとうしくなったのだろうか。  ああ、もうわからない。考えられない。フラフラする。熱でもあるのか。  結局、私は男の言うとおり、とても今から情事に臨める体調ではなく、男に引きずられながら家までの道を歩いたのだった。      ‡  知恵熱とストレスから来る風邪だな。あたしはそう判断した。症状は熱が出ただけだったから、医者には行かず家で寝ていた。  それが悪かったのか、熱は一向に引かず、三日を過ぎたあたりでまずいと思い、医者にかかった。病名はやっぱり風邪だったけど「一応診察には来なさい」と注意されてしまった。 「アホだなぁ、お前」  ──さて、この諸悪の根源はこの三日間どうしていたかというと、何もしていなかった。  見舞いにも来ず(あたしが来るなと言ったのだけど)、仕事にも行かず(「優介の仕事は優介の仕事で、俺の仕事じゃない」とのこと。こういう時、優介本人が会社に信用ある人間で良かったと思う)、家でゴロゴロしていたらしい。腹立たしいったらない。  四日目に突然私の家に現れ、「なんだまだ寝てたのかよ」とのたまった。元気な時なら殴り飛ばしたかもしれない。  
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