今宵、悪魔の眠る城で

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  「17の誕生日を待たず、そいつは死んだ。血ぃ吐きまくって相当スプラッタな死に様だったのに、最後まであいつは笑ってた。俺は正直なところ、それがとんでもなく怖かった。どうして死ぬ時に笑えるのか、って。……でも、後になって俺にもその気持ちがわかった」 「?」  布団の上で小さく首を傾げると、『洋』は眉を寄せるようにして笑った。 「そいつが死んだ後、俺はお国のために戦いに出て、そんで死んだ」  なんでもないことのように、淡々と男は言った。 「その時にようやくわかった。あの日のあいつの気持ちが。“これで解放される”って思ったんだ。“これで辛かった何もかもが終わるんだ”って。呪いみたいな苦痛の連鎖から、ようやく逃れられるんだ、って。だから、あいつは死ぬ時に笑ったんだ、って。あいつは表面には出さなかったけど、実際すげぇしんどかったんだって、自分の心臓が止まっていくのを感じながら、俺はようやくわかったんだ。笑いながら」 「……それで悪魔になったの?」 「そう」 「その彼女は、悪魔にはならなかったの?」 「あいつはならねぇよ。そんな見苦しい奴じゃなかったし、この世に未練も残してなかったし」 「未練?」  ということは、『洋』はこの世に未練があったから、悪魔となって漂い続けているのだろうか。でも、それじゃまるで── 「あんたの」  上半身を起こして、あたしは男の目を正面から見た。 「『洋』の未練ってなんなの?」  
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