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次の日には熱も引き、あたしは仕事に復帰した。休んでる間に溜まりまくった仕事を片付けるのに必死で、その後の二日間、あたしは『洋』に会わなかった。だからもちろん、あたしは彼と寝ていない。
そして、期限は明日だった。
行こうと思えば、行けないことはないはずだった。疲れた体に鞭を打ち、奴の元へ行き、抱かれ、浄化を行い、優介を取り戻す。この二日間、やろうと思えばできたことで、あたしは正しくはそうするべきだった。優介を愛する、あたしであったなら。
しかし、あたしはそれをしなかった。理由はわからない。考えることが恐ろしかった。自分の中の優介を消したくなかった。でも、時間は確実に迫ってきている。
混迷したあたしは、腹をくくってその日の夜、仕事が終わってから奴の所に向かった。
合い鍵で鍵を開け、部屋へ入る。電気は付いていたのだけど、物音がしない。
探してみると、ソファの上で眠っている恋人の姿を見つけた。実際は“恋人に取り憑いた幽霊”とでも言えばいいのか。
静かに近寄り、健やかな寝顔を見下ろす。子どもみたいなそれは、まごうことなき優介の寝顔。なのに、脳裏に浮かぶのが人を見下したようなあの笑顔だなんて、気が狂ってしまったのだろうか。
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