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そして、約束の今週。
優介はそこにはいなかった。いたのは、優介の皮を被った悪魔だった。
「もう一回説明してくれる?」
あたしは、夕食の材料が入ったスーパーの袋を抱えたまま、ソファにだらしなく座る男を睨み付けた。
「なに、聞こえなかったわけ? 耳遠いなぁ」
鬼の形相で詰め寄っても、男は綽々(しゃくしゃく)とした態度を崩さなかった。足を組み換え、嘲笑じみた笑いを浮かべる。
「だーかーら。この男の体は俺が乗っ取ったって言ったの」
「意味がわからない」
冷たく、私は切り返した。男は優介と同じ顔で、同じ声で、同じ仕草で、私の知っている優介ではない。誰だこいつは。誰なんだ。優介は、あたしの恋人はどこに行ってしまったんだ。
「まだ現実逃避するつもり? いい加減認めろよ。俺は優介なの。お前が愛してやまない、お前の恋人なの」
嘘だ。だって優介は、こんな人をおちょくるような言い方をしない。あたしのことを「お前」なんて言わない。こんな悪どい笑顔をしない。彼は優しくて気が弱くて、けれど芯の通った真面目な人で、「ねえ、ゆいちゃん」と柔らかく笑う。
こいつじゃない。こいつは、私を騙そうとしている。
「頭が付いていけねぇのもわかるから説明してやるよ。俺は悪魔なの。お前たち人間が忌み嫌う、イメージどおりの悪い奴。暇だったもんで、ちょっと人間に取り憑いてみたんだ。そんで、俺に選ばれた哀れな奴が、お前の彼氏の落合 優介くんだったわけ」
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