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耐えられなくなって、膝から崩れ落ちる。
──抱かれる? あたしがこの男に? あたしの優介を奪った悪魔に?
今にも嘔吐しそうになって、口元を押さえる。「うっ」と声が漏れると同時に、苦い味が喉の奥に広がった。
すると、頭上から笑い声が響いた。
「いいなぁ! やっぱ人間が苦しむ姿はいいぜ、サイコー!」
「このウジ虫野郎……」
「ははっ、んでお前はそのウジ虫にヤられると。傑作じゃん」
手を叩いて、男は再び笑った。
死んでしまいたい。
「ま、せいぜい一週間考えるんだな。恋人を失うか。人間としてのプライドを捨てるか」
優介を失う? 冗談じゃない。絶対に嫌だ。まだプロポーズの言葉も聞いていないのに。
けれど、とても今からこいつとシようという気にはならなかった。それをしたら、今度は確実に吐いてしまう。
涙がこぼれるのを必死にこらえながら、私は床に這いつくばった。きっと男は、そんな私をニヤニヤしながら眺めているんだろう。
優介は絶対に取り戻す。たとえ、一生の傷を心に負ったとしても。だから今日だけ、今日だけは待って、優介。お願い、今だけ、あたしに拒む自我を保たせて。
「楽しみだなぁ、ゆいちゃん?」
──消す。殺す。絶対に絶対に絶対に。きっと──きっと明日には。
好きでもない男とのセックスを決心し、あたしは床に飛び散った卵の殻を睨んだ。
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