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夜の街で、あたしは男と一緒にハンバーガーを食べた。
なんでファーストフードなのよ、と文句を言うと、好きなんだよ、と返された。
「好き? ハンバーガーが?」
「そう」
「そこは優介とは違うわね」
よかった、とあたしは安堵した。
優介は健康に気を遣う人だったから、女のあたしより自炊に凝っていた。結婚したら、彼の方が主婦っぽくなるのではないかと思ったほどで──
「…………」
結婚、できるのかな。このまま優介が戻らなかったらどうしよう。
セックスでこの悪魔が出ていくというのは、本当の話なのだろうか。にわかには信じがたい。未だにあたしは、こいつに優介の影を見る時すらある。でも、男の話が全て事実だとしたら、優介の魂はこいつに乗っ取られていて、あたしがこの男に抱かれなくては、彼は戻らない。こいつは、一週間以内に行為を行わない場合、優介は死ぬと言った。
「ねえ……」
「あ?」
「“優介が死ぬ”って、どういうこと?」
「あー」
バーガーの包み紙をくしゃりと潰し、男はどうでもよさそうに目線を上げた。
「肉体は死なねえよ。ただ、中身が俺と入れ替わっちまうだけ」
「“だけ”って……大問題よ」
「そうだろなぁ。まあ、頑張って俺を喜ばせるこったな」
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