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どう答えたものか、私が言葉に詰まっていると、シルクハットはにっこり笑って首を傾げた。
「質問がないならこの空間から出て、僕は『仕事』に戻ろうかと思うけど?」
また、虚空からぽんっとステッキが現れる。
この魔法みたいな力を使うのに、あれが必要なのかもしれない。
そもそもステッキを虚空から出し入れするのだって、既に魔法みたいなものだけれど。
「ちょっと待てよ。何しに来たんだ、てめぇ」
冬矢が敵意剥き出しの声を放つ。
うさ耳はステッキをとんっと床につき、右手はその上、左手でシルクハットをくいっと軽く上げた。
「末裔にはシークレット。そう言っただろう?」
「ふざけんな、答えになってねえっ!」
冬矢が吠えるが、シルクハットは楽しげな笑顔を崩さない。
ひょいとステッキを持ち上げ上に放ると、刹那、ステッキは虚空に消えた。
「どうしてもって言うなら……そっちのお嬢さんにだけは教えてあげてもいいよ」
そう言ってすっと右手を差し出してくる。
シルクハットの視線は、私に注がれていた。
私だけ、来いってこと。
「……っ」
不安から反射的に見上げると、冬矢は黙って私の肩を抱いていた力を緩めた。
安心できる理由かどうかだけ、確認できたらいいよね……。
怖いけれど、何かあったらきっと冬矢がどうにかしてくれる。
震える足で一歩ずつ近付いた。
差し出されたその手を取ろうとした瞬間……辺りがまばゆい光に包まれる。
「……ありゃ?」
シルクハットの間抜けな声が聞こえた。
え、何っ……私、嵌められたの!?
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