神崎ありす、16歳です。

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  バスケ部の先生は遅刻に厳しいらしいから、起きないと困るのは冬矢なのに。 もうこうして叩き起こそうと奮闘した回数も、1度や2度じゃ済まない。 別に私がここまでしてあげる義理はそこまで無いんだけれど、でも、なんだか放っておけなくて。 しかし今日の爆睡ぶりはいつにもまして深く、諦めてもう放っといてしまおうか……と思った矢先、教室のドアがゆっくり開いた。 「……おや、すいません。人がまだ居たんだ」 「……っ、いえ! もうすぐ出ますからっ!」 現れたのは、三年生の樋野響(ひの ひびき)先輩。 整った顔立ち、すらりと長い足……まるで王子様が絵本から出てきたみたいな人で、ろくに喋ったこともないんだけど私の憧れの人。 さらりと流れた前髪の下には怜悧な双眸、綺麗に整えられた眉、まさに眉目秀麗。 先輩は片手にヴァイオリンのケースを持っていた。 管弦楽部は人数が多いから、色んな教室に散らばって練習するんだ。 樋野先輩は、うちのクラスで練習するつもりだったらしい。 それなら尚更冬矢を早く起こさなきゃ、と思って、私は冬矢の身体をわしわしと激しく揺すった。 しかしそんな私の様子を見て、樋野先輩はくすりと笑う。 「他でやるから大丈夫だよ。気持ち良さそうに眠ってる彼を起こしてしまうのも忍びないし、ね」 そう優しい声で言うと、樋野先輩は教室から出ていってしまった。 ああっ……冬矢なんて、起きちゃって全然構わないのに! しかも今の言い方、絶対誤解された! 冬矢の馬鹿!  
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