神崎ありす、16歳です。

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  ノートを一度鞄に仕舞うと、ロッカーから辞書を取り出す。 大きく振りかぶってから思い切り頭に叩き付けてやると、私の怒りの元凶はようやく目を覚ました。 遅いんだよ、ほんとに馬鹿っ! 「ってぇ……もう少し可愛いげのある起こし方はできないのかよ」 眠そうな目に不機嫌さを滲ませながら、ゆっくり体を起こした冬矢は私を見た。 樋野先輩とはまた違った印象の釣り目が、私を恨めし気に睥睨する。 起こしてあげたのに、その言い草は何よ! 「可愛いげのある起こし方で起きるんならそうします! ほら、部活行かなくていいの?」 時計を指さすと、冬矢の目線も無言でそちらに移動。 無表情でそれを眺めていたが、突如スイッチが入ったかのようにどんっと立ち上がる。 「うっわ!? 馬鹿、起こすならもっと早く起こせよノロマありすっ!」 「だからずっと起こしてたってば!」 私の反論が耳に入っているかいないかはわからないが、冬矢は鞄を引っつかむと全速力で走り去った。 何回も何回も起こそうと奮闘した私の苦労なんてなんのその、自分の事しか見えてない。 もう、失礼なんだから。 冬矢ってば、しょうがない奴。 ……私も部活に行こう。 なんか気が削げちゃったけれど。 階段を下りて、書道部の活動場所である一階の空き教室へ。 時間的には完全に遅刻なんだけど、うちの部はそのへんゆるいから大丈夫。 部員も二人だけ。 もう一人は、既にそこに居た。  
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