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それっきり無言のまま、集中して部活は終了。
道具の片付けに入っても、会話はない。
「……お疲れ様でした」
ぺこりとお辞儀して、戸賀崎くんは教室から出ていった。
彼自身かなりの集中力の持ち主なのか、準備片付け含めて全ての行動や作業が早い。
私はまだのんびり片付け中。
始めは会話が無いのが気まずく感じられたが、今はもう慣れた。
今日だって、三言しか聞いてないよね。
片付けを終えて教室のロッカーに書道用具を置くと、下駄箱へ。
戸賀崎くんはいつもさっさと帰っちゃうから、一人。
でも、ちょっと待っていれば冬矢が来る。
私はいつも、冬矢と一緒に登下校してるんだ。
あんまりにも一緒にいるから、たまに仲を疑われるけど……。
近すぎて、冬矢とはそんなんじゃない。
もう兄弟みたいな感じ。
って話をすると、今度は『どっちが上か』で揉めるんだけどね。
絶対私のほうがお姉ちゃんだと思う。
だって今日だって、完全に私の方が『弟を世話するお姉ちゃん』だったでしょ?
でも冬矢には自覚が無いから、それを言っても糠に釘、って感じなんだよねぇ。
「あーりすっ」
私が待っているのも、冬矢にとって当たり前。
まずはひょこっと覗きこんできて、そのまま隣に並び、いつも通りの自然な歩調で二人で歩きだす。
「お疲れ様。怒られなかった?」
「おう。俺の駿足が火を噴いた……ってとこだな」
……得意そうに言うけど、私が起こしてあげたからじゃん。
そのドヤ顔が恨めしくて、脇腹に肘を突き刺した。
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