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「月夜美さん」
「はい?」
「あなたは十分すぎるくらい、魅力的な女性だ」
恥ずかしい言葉を、サラリと言って、柏木さんは頷いた。
「こんな素敵な女性に告白されて、断れる男なんて、男が好きな男か、既婚者ぐらいなものです。
僕が保証します。
月夜美さんの想い人は、月夜美さんを好きですよ」
いや、だからそれは--。
と言いそうになって、口をつぐんだ。
柏木さんに書いて貰ったラブレターで柏木さんに告白する、というサプライズを思いついた私だ。ここで引き下がるわけにはいかない。
「ラブレターを、書いては頂けませんか?」
「月夜美さんにはラブレターより、結婚式のスピーチを書いておきますよ。
もちろん代筆ではなく、友人としてスピーチさせてもらいますがね」
結婚式なら、新郎として私の左側に立っていてほしい。
「私は柏木さんの書いたラブレターがあれば、告白できそうな気がします。
ダメですか?」
「いえ、ダメというわけでは……」
明らかに動揺しているらしい、視線を足元に落としながら。
「そこまでおっしゃるのであれば……」
ヤッタ!
心の中の小さな自分がガッツポーズをした、その時だった。後ろにある、玄関の扉が開いた。
「あら、お客様かしら?」
振り返ると、女優の大竹しのぶに似た女性が立っていた。
「こちらは月夜美さんと言って、林原先生の使いで来られた方だよ」
どなただろう?
と思った時だった。
「月夜美さん、紹介しますね。僕の妻です」
妻。
僕の妻です。
私が、柏木さんの言葉の意味を理解できたのは、瞬きを三回してからだった。
「ええっ。柏木さんって、ご結婚されてたんですか!」
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