タイムリープ番外編【月夜美サンの巻】

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柏木さんのお宅へは、本当なら、上司の吉田さんが伺う予定だった。しかし急なアクシデントが発生して、行けなくなってしまったのだ。 私はその旨と、用件の内容を確認するためのメールを送ってから、車に乗り込んだ。 ここ福岡市内から鳥海市までは、高速を使っても1時間半は掛かる。 途中、コンビニで缶コーヒーのRootsを買って、先を急いだ。 「まづっ」 正直、コーヒーは好きではなかった。しかし、もしも眠気が起こって何かあってはいけないと、我慢して飲んだ。 ハンドルを握ってから20分が経過した頃。車窓は、都市高速から九州自動車道の景色へと、移っていた。 「もっと、ちゃんとした服を着てくれば良かった」 寝不足の眠い頭で選んだ服を、後悔していた。今着ているのは、紺色のリクルートスーツ。八年前に買った物で、よく見ると、肘とスカートの一部には、擦れたような光沢があった。 それでもすぐに、私の気持ちは上向きに上昇する。 初めて会う、柏木さんとは、一体どんな人なのだろう。 身長は? 年齢は? 恋人はいるのだろうか? FMラジオのスイッチを入れると、10年前に流行った、懐かしいメロディーが流れてきた。 私は無意識に、メロディーに合わせて口ずさんでいた。 鳥海大橋を抜けたのは、待ち合わせ時刻の15分前だった。 かなりきわどい数字だが、急げば間に合う。 私は、出発時に設定しておいたカーナビの指示に従って、車を走らせた。 二つ目の信号を右折して、緑色の看板のガソリンスタンドから左折する。 景色は徐々に、街中から住宅街のそれに変わっていった。 「大丈夫そうね」 と、安心しかけた時、私はある異変に気がついた。 「この道、さっきも通った気がするんだけど……」 元々、方向に関しては鈍い私。 気づいた時には、約束の時間の8分前に迫っていた。
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