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二人は揃ってコンビニへ入った。べたつくような暑さから、一瞬にして冷たい空気に包まれ、静雄は思わずほっと息を吐く。
「何にしようかな。あ、シズちゃん決めた?」
「ああ」
なんとなく、会話がぎこちない。まあそれもそうだろう。いつもはお互いに罵詈雑言ばかり吐いているのだから。なんとなく落ち着かない気分のまま二人はそれぞれ会計を済ませ、ありがとうございました、という店員の言葉を背に店を出る。
「暑っ」
そう呟いた臨也は、さっそくアイスの袋を開けにかかる。
「シズちゃんさあ」
とアイスキャンデーにかぶり付きながら臨也が言った。
「夏の真っ盛りに野外でこんだけ走り回って平気なんだから、ほんとに化け物だよね」
いつもの馬鹿にした調子ではなく、ほんとに感心したように言うものだから、静雄は腹も立てずにうるせえ、とだけ返した。ふと思い出して言葉を続ける。
「お前、体力測定の時すげえ嫌がってサボってたな」「だって面倒くさいじゃん。まああれも結局補習で受けさせられたけど」
「馬鹿だろ」
「うるさいな。シズちゃんには言われたくないよ」
と臨也は眉を寄せる。
こいつ、本当に身体の調子が悪いのかもしれない、と静雄はふと思った。そんな相手に喧嘩をするのは本意ではない。例えそれが臨也でもある。静雄はカップとスプーンをゴミ箱に投げ捨て、臨也に目をやった。
「じゃあ、俺帰るわ」
臨也はぽかんとした顔になり、それから何度も頷いた。
「あ、ああ、うん、そう」
「じゃあな」
静雄は軽く手をあげ、歩き出したが、ふと我に返り、今の会話を反芻する。
(なんか、今の普通のダチみたいじゃねぇか)
自分と臨也の関係はそんなもんじゃないはずなのだ。
(気持ち悪ぃ)
静雄は顔をしかめた。
(それもこれも、あいつが調子悪そうにしてやがるから。そうだあいつが悪いんだ。あのくそったれ臨也)
そう罵ることで膨らんだ臨也への憎悪に、静雄は安心して帰路を辿ったのだった。
ホムペに載せているものを加筆修正しました。
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