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「沙羅さん。タブレットも頼むよ」
パパがママに頼み、ママは「はぁ~い」とくるくると巻いた髪を揺らして、また指を振る。
するとパパ達の部屋の扉が見えない力に押され開くと、白いプラスチックの入れ物が蝶が舞うように飛んできた。
白い入れ物はまるで何事もなかったかのように、パパの目の前のテーブルの上にストンと降り立ち動きを止める。
パパは蓋を回し、中から数粒の赤い錠剤を取り出すと、ラムネみたいにバリバリと食べた。
あたしはその光景を特別気にするでもなく、テレビから流れるニュースに目をやる。
『――それでは、今朝のニュースです。昨夜また若い女性が襲われました。女性に命の別状はないとのことですが、大量の血液を抜かれているようで、今も病院で手当を受けているとのことです。
今回の事件も連日報道しているように、女性にはほとんど外傷がないようで――』
「またこのニュースか」
あたしはリモコンのスイッチを押して他の番組を見てみるが、他でも同じニュースを流していた。
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