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テレビ画面から目を離し、相変わらずコーヒー片手に新聞を読み耽るパパを見遣る。
「まさかパパの仕業じゃないよね?」
白いYシャツに紺のストライプのネクタイ姿のパパ。
見た目は30代後半くらいにしか見えないが、実際は1世紀以上生きているバンパイア。
若い女性の血液を――しかもほとんど外傷を残さずに抜くなんて、バンパイアの仕業としか考えられない。
「パパな訳ないじゃないか。沙羅さんと出逢って人間界に身を置くようになってこの方、一度たりとも人の血を吸ったことはないよ」
パパはコーヒーを置き、赤い錠剤が入った入れ物を取って揺らす。
赤い錠剤――タブレットは言わば血液の塊のような物で、人の血を吸わない代わりにバンパイアの為の薬を飲んで生を保っている。
もちろん普通に食事も摂るけれど、バンパイアのパパにとってはタブレットはなくてはならない物。
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