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「ん?」
ヒカルはふと、体育館二階の窓を見た。
視界の端で、誰かがこちらを見ていたような気がした。しかしじっくりと外から観察しても何も見えない。
今は運動部員たちの下校時間を少し過ぎた頃。空はほとんど夜で、校庭に生徒の姿はみえない。
ヒカルも帰らなければならなかったが、不思議とさっきの姿を確認せずにはいられなかった。
足が、自然と体育館の二階に向かっていた。
体育館二階は真っ暗だが闇に目が慣れているおかげで散在する卓球台にぶつからずにすんだ。
目的の窓辺に着いたが、人影らしいものは見つけられなかった。
「あれ、誰もいない……」
無駄骨だったと後悔し、帰ろうとしたとき、目の端で何かが動いた。反射的にそちらを見たが、古びた体育館の壁があるだけで、やはり何も見えない。
わけの分からない寒気が背中を走った。何か、嫌な予感がする。
「あのぉ、もしかして私が見えているのですか?」
何もない、誰もいないはずの背後の空間から声が聞こえた。
心臓は経験が無いほど早く動き、串刺しにされたように痛んだ。体は数センチ飛び上がってフローリングの床にこけた。
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