1部 容疑

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周囲には人影もなく、漆黒の世界となっていた。 音すらなく、ポツリポツリとある街灯がかろうじて世界を保たせていた。 「ハァ……ハァ」 男は逃げるように足を動かし、彼の周囲の静寂を破っていた。 彼は何かに脅え、その脅えていることにすら脅えを見せているようだった。 「自転車……」 放置してあった古くも新しくもない自転車が目に留まる。 彼は力いっぱい蹴りつける。 苛立つにはそれなりの理由があった。
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