プロローグ

3/7
前へ
/17ページ
次へ
「……来たか」 山賊の今の根城である古い屋敷の二階の寝室で、連れられてきたトーラを舐め回すように見るのは山賊の頭領。 伊達に頭領と呼ばれてはいない恐ろしい程に逞しく、傷跡だらけの男の風貌はまさに野獣と言ったところ。いや、知恵がある分野獣より遥かに危険であろう。 「ご苦労、お前は下がっていいぞ。コイツは飽きたらお前らに回してやる」 「へいッ! ありがとうございやす」 トーラを連れてきた男は深々と頭を下げ、すぐに一階へと戻って行った。 ある程度の広さを持った寝室で頭領はゆっくりとトーラに近付いていく。 「待って下さい」 それをトーラが開いた右手を前に突き出しながら静止させる。 「本当に約束は守るのですね?」 すると頭領は隠す事無く大笑いしながら口を開く。 「あぁ、解放してやるよ。 "牢屋"からはな」 後半を強調して言った頭領に、疑問と底知れぬ恐怖を感じ、眉をひそめるトーラ。 「どういう事です?」 せめて、疑問だけでも解こうと頭領に注意深く尋ねるトーラ。 頭領から返ってきた言葉は彼女の想像を遥かに超えるものだった。 「牢屋からは解放してやるよ。その後は男は売りモンに、女は死ぬまで俺達の玩具になるがな」 「なッ!?」 あまりの驚きに彼女の目は目蓋が裂けんばかりに見開かれる。 そう、山賊は元よりトーラ達を帰すつもりなどさらさら無いのだ。 .
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加