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「……来たか」
山賊の今の根城である古い屋敷の二階の寝室で、連れられてきたトーラを舐め回すように見るのは山賊の頭領。
伊達に頭領と呼ばれてはいない恐ろしい程に逞しく、傷跡だらけの男の風貌はまさに野獣と言ったところ。いや、知恵がある分野獣より遥かに危険であろう。
「ご苦労、お前は下がっていいぞ。コイツは飽きたらお前らに回してやる」
「へいッ! ありがとうございやす」
トーラを連れてきた男は深々と頭を下げ、すぐに一階へと戻って行った。
ある程度の広さを持った寝室で頭領はゆっくりとトーラに近付いていく。
「待って下さい」
それをトーラが開いた右手を前に突き出しながら静止させる。
「本当に約束は守るのですね?」
すると頭領は隠す事無く大笑いしながら口を開く。
「あぁ、解放してやるよ。
"牢屋"からはな」
後半を強調して言った頭領に、疑問と底知れぬ恐怖を感じ、眉をひそめるトーラ。
「どういう事です?」
せめて、疑問だけでも解こうと頭領に注意深く尋ねるトーラ。
頭領から返ってきた言葉は彼女の想像を遥かに超えるものだった。
「牢屋からは解放してやるよ。その後は男は売りモンに、女は死ぬまで俺達の玩具になるがな」
「なッ!?」
あまりの驚きに彼女の目は目蓋が裂けんばかりに見開かれる。
そう、山賊は元よりトーラ達を帰すつもりなどさらさら無いのだ。
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