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「ど、何処だ! 何処にいやがる!」
突如響いた声に驚き、狼狽えながら声の主をキョロキョロと首を振り回しながら探す頭領。
トーラはあまりの事態に硬直してしまっている。
しかし、声の主は2人の思うままにはさせない。
「己のが醜い欲望を果たすため、弱き者を虐げ、その身を貪り、心を貶める外道よ……」
再び、何処から途もなく聞こえる声に動揺していた頭領の動きがピタリ止まる。
「貴様の悪鬼羅刹の如き所業……。
人が!
神が!
天が見逃そうとも!
この俺は見逃さんッ!!」
長々と続く口上。
それが止んだと思った瞬間──
「轟拳制裁ッ!!」
頭領はその日最後になる音─自分へと凄まじい勢いで迫る拳が自身の脇腹を直撃し、骨を砕く─を耳にし、意識を失いながら、風に吹かれた紙のように部屋の端へと吹き飛ばされた。
その光景に、トーラは安堵か、驚愕か、へたりと尻餅を突く。
その目には、鼻と口をバンダナで隠し、炎が燃え上がるかのような赤い髪に髪型を持ち、白のコートに藍色のズボンを履いた青年が、腰を落とし、右の拳を突き出した形で映っていた。
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