Act.1 visiter

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空は湿気というフィルターにより白みがかり、どこから現れたのか知れない蝉の鳴き声に覆われる。 アスファルトは太陽から降り注ぐ膨大な熱量を余すことなく吸収し、この街を下方からも熱し続け、外にいる人々の数が、どこか少ない感じがする。 恐らく人々はこの暑さから逃れるように涼しいオフィスで仕事をしている。 もしくは体温を下げるといわれているコーヒーを自販機などで購入し、それを片手に木陰のベンチで休んでいるのだろう。 だが、どの現象にも例外というものは存在する。 たとえばココ、大学二年生になった黒宿寿一 (コクヤド・ジュイチ) のバイト先であるこのコンビニも、そのひとつだ。 今はちょうど昼時。 食料もしくは水分を求める人の波が、店内に押し寄せていた。 店員は無駄な思考を停止させ、ただひたすら雪崩のようにおそいかかる客を機械的に捌いていく。
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