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眼球クラゲ。
グロテスクで不思議なその生物はある日突然、わたしの意識に何の違和感もなく滑り込むように現れた。
小さな透明の箱の中、主を失ったばかりの空きスペース。
眼球クラゲは見計らったように、そこに住み始めた。
もともとその水槽には金魚を飼っていた。
お祭りで掬い上げた、黒いでめ金と和金の二匹。
珍しく冬を越すことができたと思った矢先、春になると卵を産んだ。
まさか金魚掬い出身の金魚達が、卵を産むとは夢にも思っていなかったわたしはそれはもう喜んだ。
放っておくと卵を食べてしまうらしいので、親は別の水槽に移した。
しばらくすると卵の中に目らしきものが確認できた。
魚独特のぎょろっとした、小さな目。
時々くるんっ、と卵の中で動いた。
その度にわたしははしゃぎ、飽きもせずにずっと水槽の中を覗いていた。
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