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いつもと変わらない池袋の日常。しかしそんな日常が、すぐ壊れてしまう事を―――――誰も知らない。
「いぃぃざぁぁやぁぁぁ!!!!」
60階通りで聞こえる叫び声は、平和島静雄と折原臨也の“殺し合い”という名の喧嘩が、今現在行われている事を人々に理解させてくれた。
「シズちゃんってば、相変わらず馬鹿力だねぇ。ってか、少しは手加減してよ」
「うるせぇ、黙って死んどけぇぇぇ!!!!」
近くにあった自販機を持ち上げた静雄は、臨也に向かって勢いよく投げた。真っ直ぐ彼に向かっていったそれは、あたる寸前で彼に軽く避けられてしまった。彼の避けた後には――――
「っ、危ねぇ!!!!」
「うわっ、酷いねぇシズちゃん」
臨也の後ろを歩いていた女性に、静雄の投げた自販機が直撃してしまった。静雄は焦った。自分の力のせいで、無関係な人に被害が及んでしまった。死んでいたらどうしようと、彼が考えていた時――――
「っう……占いで自販機降ってくるなんて、言ってなかったけどなぁ。むぅ、厄日なのかな……」
自販機が直撃した女性が、何事も無かったかの様に立ち上がった。無事な様子の彼女を見て、二人は違う反応を示した。静雄は安心した表情を浮かべたが、臨也は不気味な笑みを浮かべていた。新しい玩具を見つけた、子供の様に――――。
そんな彼等など無視して、彼女はとっとと立ち去ろうとしていた。しかし彼女を呼び止める声が一つ――――
「君、ちょっと待ちなよ」
「――私に何か用でも?」
「用っていうか……疑問なんだけど、怪我をさせられたのにどうして文句を言わないの?」
臨也の問いに対して、彼女は暫く黙った。しかし直ぐ顔を上げ、彼の目を見て言った。
「言う必要が無いからです」
「ふーん……じゃあ、あと一つ答えてよ。君の背中のそれって――――日本刀?」
「貴方に関係ありません」
臨也の示したそれは、白い布が巻かれた状態で、彼女に背負われていた。彼が言ってから気付いたのか、静雄は鞄等に紛れた日本刀を凝視した。そして女性は、再度立ち去ろうとした。
「ちょっと待ってくれ!!」
「今度は貴方ですか。まだ何か私に用でも?」
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