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「二人とも――私に二度と関わらないでください」
彼女の口から発した言葉を聞いて、静雄は珍しく怒らなかった。いつもなら、何かしら投げつけたりして、相手を撃沈させ―――黙らせている筈だ。
しかし今回は、珍しく興味が沸いた。彼女が言った直後は、
――あぁ、コイツもか
と思っていた。
だが彼女を見ていると、勘違いだというのが解ってきた。それを彼女は、自分の口から語ってくれた。
「私――化物なんです」
「「は?」」
聞こえてきた言葉は、短くても確りと彼等の耳に届いた。が、いきなりの衝撃事実を告白され、流石の臨也でも驚いて固まってしまった。
そりゃそうだ。初対面の人物が、いきなり自分に対して「化物なんだ」と告白してくるなんて、誰も予想すらしていないだろう。
「私に関われば、貴方達に被害が及びます。だからっ……!!」
「細いな、アンタ」
「は、離してください!!」
自分に関わるな、と泣きながら訴える彼女を静雄は――――優しく抱きしめた。名も知らぬ少女を抱きしめながら、静雄は考えていた。彼女は自分に似ている、いや……似すぎている。
化物だからというだけで、周りと置きたくもない距離を置かされ、自分という存在を否定され続け、孤独という名の殻に籠ってしまった存在。
まさにそんな状態だった自分が、今そこに現れたかの様に思えてしまう程、彼女は孤独に見えた。
「アンタのドコが化物なんだ?俺には解んねぇよ」
「な、何を根拠に……」
「アンタこそ、何を根拠に自分が化物だなんて言ってんだよ……」
「っ……!!」
静雄の言葉に彼女は、目を見開いた後――うつ向いてしまった。そんな彼女をじっと見つめる静雄だが、うつ向かれた瞬間――無理矢理彼女の顔をあげさせた。
「きゃっ……」
「アンタは化物なんかじゃない。ちゃんとした人間だ」
「い、いきなりそんな……」
「何度だって言うぜ、俺は。アンタは人間で普通の女だ。それは絶対に変わらねぇ」
静雄の真っ直ぐな瞳を見て、彼女は黙ってしまった。それと同時に彼女は、喜びを感じていた。自分の存在が他人に認められたという、一つの幸せに対して。
「――最後に言わせてくれ。もしアンタがまだ孤独なら、俺がずっと……傍にいるから。だから……頼むから」
――泣かないでくれ
そう言った直後、静雄は彼女の顔を自身の胸に埋めさせ、再び優しく抱きしめた。
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