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静雄が少女を抱きしめているのを見て、臨也は何かイラッと来た。いきなり現れた彼女が、静雄と仲良さそうにしてるから――?
いや、違う。
彼がイラッとした原因は、静雄が“人間らしい”行為をしているから。彼にとって、静雄は“化物”なのだ。“化物”である筈の彼が、“人間”の様な行為をした事で、臨也は苛々している――――筈だ。
何故此処で不確定な答えなのか。それは臨也本人でさえ、“何故”が答えられなかった。いや、認めたくなかったのだ。
彼は、よく「人ラブ!!」などと言っている。それは、人間全体が好きと言う訳であって、特別に誰かを好きになったりする訳では無いという意味だ。そんな彼は、自身の胸に沸き上がる感情の存在を認められなかったのだ。
しかしこのまま黙っていても、つまらないだろうと思ったのか―――― 彼は動いた。
「シズちゃん、隙だらけだよっ!!」
「臨也っ、テメェ!!!!」
少女の存在など気にせず、臨也は突っ込んできた。いつも彼が持ち歩いている愛用のナイフを――――手で握りしめた状態で。
突っ込んでくる臨也を見て、静雄は考えた。どうすれば彼女を守れるか。自分が盾になる事も考えたが、それより前に――――少女が動いた。
「っ……――!!!!」
臨也の手に持っていたナイフは、静雄には刺さっておらず、彼に抱きしめられていた筈の少女に刺さった。
臨也のナイフは、彼女の背中に深く刺さっていた。傷口からは、沢山の血が流れていた。それを見た静雄は、目を見開いた。その直後、近くの標識を引っこ抜いて投げようとし―――少女に腕を掴まれた。
「――大、丈夫ですっ」
「お前っ、そんな怪我で大丈夫な訳ねぇだろうが!!」
「シズちゃん、彼女の背中にあるナイフ……抜いてみなよ」
「あぁ゛!?誰がノミ蟲の言うことなんか………」
「良いから早く抜いてよ、シズちゃん」
目の前にいる彼は気にくわないが、ナイフを刺さったままには出来ず、結局臨也の言う事を聞く事にした。
「……痛かったら言えよ?」
「別に、平気です」
彼女の返事を聞いてから、静雄はナイフを抜いた。ナイフを抜いた瞬間、傷口から血が少しは出たが、沢山溢れでる事はなかった。しかもよく見ると、傷口が塞がっていたのだ。
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