プロローグ

3/3
前へ
/32ページ
次へ
 ある男は、そのゲームの「力を以って宝を奪う」点が好きだった。男は力自慢だったが、その力で巨悪と戦う、なんて男なら一度は憧れるシュチュエーションには、そうそう出会えるものじゃない。だからそれを味わわせてくれるこのゲームが好きだった。  ある男は、そのゲームの「知力で腕力を制することもできる」点が好きだった。男は頭は切れるが腕っ節は弱く、イジメられていた過去を持っていた。だからその悔しさを晴らさせてくれるこのゲームが好きだった。  ある女は、そのゲームの「仲間と協力して宝を集める」点が好きだった。女は幼い頃から世界中を飛び回っており、仲間と呼べる相手がほとんどいなかった。だから仲間との絆を感じさせてくれるこのゲームが好きだった。  2009年、とある無料携帯ゲームサイトが発表したソーシャルゲームが、爆発的な人気を呼んだ。  ミッションを遂行し、  バトルや協力プレイでお宝を入手し、  より強い相手、より価値あるお宝を狙って戦う――  敵からお宝を盗ったほんの数瞬後には別な相手から盗られている、といったスリリングなゲーム展開に、人々は夢中になった。  そのゲームの名は――
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加