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「どうぞ…」
「ありがとう…」
お茶を出し艶はニコニコと斎藤を見ている。
「艶…さん…は飲まないのか?」
艶が入れた茶は斎藤の分一つだけだった。
「私はいいんです。それと艶でいいですよ?」
ずっとニコニコと笑顔でいる艶に斎藤の頬の赤みは収まらないままで目を合わせる事も出来ない。
「何故だ?…艶…も喉が渇いているだろう?飲めばいいじゃないか?」
「何故…?でしょうねぇ…。私はいいんですよ~。」
艶は今まで自由にお茶を飲む事も許されなかった。
いつのまにかそれは普通の事となり艶自身何も思わなくなっていた。
「一人で飲んでも美味くない。…艶…も一緒に茶を飲もう。」
「えっ…?」
そんな事を言うものは今までいなかった。
茶を飲むのも茶菓子を食べるのも艶の前で美味しそうに口にする者ばかりだった。
艶に勧める者など一人もいなかった。
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