三十二

29/33
前へ
/863ページ
次へ
後ろ手に襖を閉め、土方の部屋へと向かう。 艶の目が脳裏に浮かんで離れない。 見間違いかもしれない。 寝起きでよく周りがわからなかっただけかもしれない。 でも、拒絶とも取れた艶の目に山崎はショックを隠しきれなかった。 「俺では艶の支えにはなれんのか・・・」 はぁーっと大きくため息を吐いて、何かをふるい落とすように頭を数回左右に振って 土方の部屋の前に立った。 「山崎です。」 部屋からは、あぁと短く低く土方が返事をした。 「烝か…どうした?」 土方と沖田は向かい合って座っていて重い空気が流れている。 「艶が目覚ましたで…」 そう言うと沖田はハッと山崎のほうに顔をあげて転がるように部屋を出て行った。 .
/863ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3203人が本棚に入れています
本棚に追加