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「あなたが例の」 「なんて言われているか怖いですね」 「そう思うことをしたと考えてよろしいかしら?」 「想像にお任せします。俺は結華に嫌な思いはさせてません」 「それって、あなたの勝手な判断でしょう。結華はそう思ってないかもよ」 「それなら誠意で見返すしかありませんね」 立ったまま、梓と榊原翼のやり取りが始まって口をはさむ隙がない。 杏さんと泉さんは、いつの間にか私達の隣のテーブルをくっ付けて、運ばれて来ていたサラダをつまんでいた。 「結華チャン愛されてるわね」 「本当に。梓ちゃんの性格いいですね。今度は杏さんと私と結華ちゃんと梓ちゃんで飲みに行きましょうよ」 「いいわね」 「あの」 梓たちがピリピリした雰囲気の中、こちらはだいぶ和やかだ。 「止めないんですか?」 「言いたいことが彼女の中で沢山あるのよ。大事な親友を心配してね」 「先生に対してあんな威圧的な女性は杏さん以外は初めてです」 複雑な心境だけど、さすがにこれ以上は店内で目立ちたくない。 「梓! そろそろ戻らないと」 私の声にふたりの言い争いがピタリと止んだ。 「……仕方ない。榊原さん、それじゃあまた今度」 「……ああ。今度はお茶ぐらい出しますよ」 「当然です」 梓が早足にレジに向かう。 「失礼します」 杏さんと泉さんに頭を下げてから梓を追った。 外に出て梓が叫ぶ。 「……ムカつくー!!」
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