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「お疲れ様です。よくお似合いですよ。どうですか?」
試着室を出てミュールを穿いて鏡の前に行く。
足元まである裾がヒラリと舞う。
「可愛い」
あくまで自分じゃなくて服だけどね。
「このワンピース色違いで四色ありまして、こちらの黒と白、ブルーにピンクありますよ」
わざわざ持ってきてくれたらしい。第一印象は黒だった。
白は汚れが気になるしブルーは違う気がする。ピンクは論外だな。
黒なら上着次第で長めに着れるかもしれない。
「じゃあコレください」
「黒でよろしいですか?」
「はい」
「いらっしゃいませ」
声に反応して入り口を見るとカップルが入ってきた。
「翼~どれがいいかな? いいの選んで!」
「お前のだからお前が選べ」
「それじゃ翼と一緒にきた意味ないじゃない」
「知らねぇよ」
女はガッチリ男の腕に絡み付いている。
甘えた高い声は耳障りだ。男はだるそうにしているだけで女に興味なさそう。
しばらくカップルを見ていたら、女の方は洋服を物色しはじめた。
私も着替えるために試着室に入った。
いや、入ろうとしたけど入れなかった。
腕に感じる体温と力。
驚いて顔をあげるとさっきのカップルの男性だった。
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