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「高くない」 「十分高いよ」 「ベストカラーを診断するには時間と手間がかかるんだよ。それにさっきも言ったけど、その人に合う服の形や靴、バッグや髪型もアドバイスするし最後はベストカラーを使ってメイクをする。土産として杏お手製のプレゼント付き」 確かに、ちょっと捨てがたい。 杏さんのプレゼントも見てみたいし一度知れば、永久的に自分の宝になる。 「自分のベストカラーを知ることが、自分を知るということ。自分の好きな色が似合ってる場合もあるから、その人は自分をよく知ってるってことだ」 いつの間にか、カラー教室みたいになってきた。 梓はひたすら泉さんと杏さんに質問攻めでこちらに入ってこられない。 どうりで静かなはず。 「あなたはどうだったの?」 「男は女性よりもファッションの幅が狭いからな。たまに小物に取り入れたりするぐらいだ。女の子が変わる瞬間が俺は嬉しいんだよ」 今まで会った女性たちの中で、ありがとうと微笑んだ女性が脳裏に浮かんだ。 あぁ、あれが榊原翼にとっての報酬なんだ。 「分かった。次の休みに行くよ」 彼の勢いに負けた。 「どう変われるか試させてよ」 期待以上のものでなかったらお金は一円だって払ってやらないから。 「変えさせてやる」 「まぁ頑張って」 これはある意味、賭けだ。
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