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「お疲れ様」 仕事終わりの一杯は美味しい。 こうやって皆で飲むのが一段と美味しくさせる。 「お疲れ様です。もー朝から電話あってビックリしましたよ」 「だって結華チャンが中々返事くれないんだもん」 「……いつもあんなに早起きなんですか?」 「大体ね。旦那にお弁当作ってるから」 聞いて納得。 にしても、杏さんを知れば知るほど意外な一面が多い。 奥さんやってるから当たり前だけど、結婚していない自分にとっては誰かのためになんて、当分なさそう。 手先が器用だから料理も上手そうだ。 「梓チャンも一緒だし誘う手間が省けたわ」 「いきなり参加してスミマセン」 「いいのよ。こっちも翼いるし」 「本当は先生誘うつもりなかったんですよ。仕方なくです」 泉さんの発言に、顔を背けて目を合わせない。 梓に小さく耳打ちする。 「やっぱり考え過ぎじゃない」 「だといいけど」 梓の言い方に首を傾げつつビールを飲んだ。 「梓ちゃんは彼氏いるの?」 「まあ」 今回は梓のことを中心に会話が広がる。 「どんな人?」 「……優しくて真面目な人、かな」 私があまり見ない、女の子の顔。 でも、なんでかな? いつもと違う感じがする。 いつもより、想いが溢れてるみたい。 それがなんでかは分からないけど、なんだか胸が痛くなった。
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