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「結華?」 彼に名前を呼ばれて、飛んでいた意識が戻ってきた。 「どうした?」 「……なんでもないよ?」 隣にいる梓も首を傾げている。 今はいつもと、同じ顔。 気のせい、かな? 彼に動揺したのを見抜かれるなんて不覚。 「梓チャン、その人のこと大切に思ってんのね」 「え?」 「だって、顔に書いてある」 いつもなら言われても、明るく笑って当たり前ですよ的な感じでいいそうなのに。 「……別に、そんなんじゃ」 顔が徐々に赤くなって声も小さい。 こんな梓初めて。 なんだか可愛くて、思わず梓の手をそっと握った。 少し驚きつつも、握り返してきた。 きっと、梓の中で葛藤していることがあるんだ。 まだ言われていないけど、梓ならいつか必ず伝えてくれる。 「……ゴメン、結華」 「なに謝ってんのよ。梓らしくない。いつでもいいから教えて」 「……うん」 「ちょっと、構ってくれなきゃ私達さみしいじゃない」 「すみません」 「妬けるわね、翼?」 「別に」 「可愛くないわね」 「杏さん、可愛い先生も気持ち悪いですよ」 「それもそうね」 「……おい」 「結華ちゃん、梓ちゃんおかわりは?」 私と梓が顔をあわせると、自然と笑みがこぼれた。 「いただきます!!」
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