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「そう言えば、ここに来る途中なに話してたの? なんだか楽しそうだったけど」 「彼のお仕事のことでね。色々教えてもらってたの」 「珍しい職種だったね。結華は見てもらったの?」 「……見てもらうことになった」 「ふーん。行くんだ」 顔色が変わり、声音も少し低くなった。 「……一緒に行く?」 「いつ?」 「次の土曜日にしようかなと」 「私、仕事。どんなだったか教えて」 少し不機嫌になったけど、行くなとか一緒に行くとも言われなかった。 「もしかして、気になってるの?」 「……悪い? 面白そうじゃない」 今まで彼のことを色々言っていただけに、認めるのも少し悔しいらしい。 「私もそう思ったよ。楽しみだね」 「……うん」 何杯目かも分からないぐらいに飲みまくって、それでも平然としている彼と梓に完敗。 意識はあるけど、身体が重くてうまく動かせない。 声だけが頭に響く。 「じゃあ、そろそろお開きね。私は結華連れて帰るから」 「あぁ。頼むよ」 「……やっぱりムカつく」 「何か言った?」 「いーえ。それじゃ」 「あんまり意地張らないほうがいいんじゃないのか? ちゃんと言ってくれないと診断しないよ?」 「……聞いてたわね」 「聞こえたんだ」 「あらそう。いい耳をお持ちでなによりね」 「強気な女は嫌いじゃない。でも、結華には弱音を吐いてもいいんじゃないのか?」 「……うるさい」
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