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「……」
「……」
戸惑って声が出ない。
その間にも腕は掴まれたまま。段々イライラしてきて男性を睨み付けた。
「あの、何か?」
「それ買うの?」
「そうですけど」
初対面の人間に対してタメ口な挙げ句、上から目線。身長の関係でそうなるだけだが気分は良くない。
「やめたら?」
「は?」
つい間抜けな声が出る。
聞き間違えかと思った。
だって、例え思っていてもこんな風に初対面の人間に真っ正面から正直に言われたことない。
「似合ってませんよ」
今まで普通にタメ口だったくせに、ここだけ丁寧に言うなんてますます腹立たしい。
しかも、今気づいた。
コイツ……顔はカッコイイ。
梓といい坂井君といい私の周りは美形が多いのは気のせいか。
「……余計なお世話です」
思わず俯いてしまう。
似合うかどうかじゃない。ただ気分転換のためだ。思い切って顔をあげた。
「仮にも初対面の人に言われたくないです。彼女もほったらかしで他の女のところに行くなんて最低。神経疑いますね」
言われっぱなしが悔しくて思ったことを言ってやった。
男性はまさか反発してくると思わなかったようで一瞬目を丸くした。
「似合わないもんに金出すのもどうかと思うけど?」
「だからなんであなたに言われないといけないんですか」
「親切で言ってるのに」
「それが余計なお世話なんです。いい加減放してくれません?」
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