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なんだが色々あった一週間も終わり、あっという間に約束の土曜日。
楽しみではあるものの、自分の中で賭けている以上は少し複雑。
扉の前で、中々踏み出せないでいる。
手をかけようとした瞬間に、勢いよく扉が開いた。
「あら、結華チャンいらっしゃい」
「おはようございます」
出迎えてくれたのは杏さん。たまたま掃除していたようだ。
「今日はよろしくね」
「あ、こちらこそ。他にも誰かいるんですか?」
「今日は結華チャンだけよ。翼のやつ張り切ってたわ」
どう反応していいのか分からず、とりあえず笑っておいた。
自分から啖呵きったけど、変えさせてやるなんてよほど自信があるんだろう。
「緊張してる?」
「まぁ、多少」
「大丈夫。楽しまないと損よ。結華チャンは何もしなくていいし、感じたままを言ってくれたら嬉しいな」
杏さんの笑顔につられてしまう。
「分かりました。思ったことを言えばいいんですよね?」
「えぇ。でもあんまり翼をいじめないでね。あー見えて繊細だから」
どこが?
と思わず言いそうになるのをグッとこらえた。
普段から彼を知っている杏さんのほうが、どちらかと言えば私より彼をいじめている気がする。
「そろそろ時間だから中に入りましょう」
杏さんの言葉に、忘れかけていた緊張が甦る。
今日この扉を出る頃には、何が変わっているんだろ。
変わるためでも、変わりたいわけでもない。
ただ、知りたいだけ。
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