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「まずは髪。それから目や肌も診断して、実際に生地をあてて見ていきましょう」 泉さんの横にあるテーブルに、折り畳まれた色の布地が沢山おいてある。 「それじゃ始めます」 そう言って、さっきのように髪に触れる。 違うのは真剣な表情。 私にはわからない単語。 「グレッシュ。マッド。量は少なくて細い。クセあり」 「はい」 泉さんは私が書いたやつに彼の言葉を書き写していく。 「眉はソフト。グレッシュ。量は少ない」 今度は鏡越しではなく、至近距離から顔を見られる。 恥ずかしかったけど、彼がふざける様子もなかったから我慢する。 「なんで見ただけで分かるの?」 「これは経験だよ。沢山の人をこれでも見てきたから。因みに、冬谷はカードを見ながらだよ」 カード? と、首を傾げると泉さんが見せてくれた。 「この二枚は髪とか眉の色を見分けるもの。こっちは、さっき説明したイエローベースの肌かブルーベースの肌をみるものなの。先生みたいに見ただけで分かるようになるのが目標なんだ」 カードに四色ずつ並んでいる。 借りて、試しに泉さんの髪にあててどの色か見てみたけど、よくわからない。 「いつも、パパッと先生言うけど、今日はいつにも増して早いですね」 「そりゃ、最近会う機会多かったしじっくり見れたからね」 私と泉さんがふたりして首を傾げると、彼が私の耳元で囁いた。 「俺の家でね」
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