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「なんか、そんな感じする」 「褒め言葉として受け取っておくよ」 「はい、先生」 泉さんが深い茶色と紺色の生地を彼に渡す。 「それは?」 「これはイエローベースかブルーベースの生地。もし、ブルーベースだけのサマー・ウィンターとかだったら茶色の生地は合わなくて顔が沈むんだ。あとはクマができたりホウレイ線がこくなったり。結華も生地じゃなくて、自分の顔を見てて」 言われても、いまいちどう変わっているか分からない。 「結華はあんまり変化ないからイエローベースもブルーベースも持っています」 ああ、スプリング・サマーかサマー・スプリングって言ってたもんね。 「じゃあ次は赤、黄色、青、緑、ピンクの生地をあてていきます」 四枚ずつある四季ごとの生地を見せてくれて、まるでケープするようにあてていく。 四季で、同じ色なのに全然違う。 「ウィンターって結構ハッキリした色が多いのね」 「あぁ。オータムは秋だから枯れ葉や土のような色が多いだろ。このカラーの人は仕事できるよ。感情で動かずきちんと考えて行動する人が多い。実は緊張してるのに、それを顔に出さないで平然としているって感じ。表舞台より裏方にいる縁の下の力持ちみたいな人」 チラッと泉さんをみると、生地を準備したり使い終わった生地を畳んで片付けていた。 仕事できるし女性らしさもあるなら、ちょっと羨ましい。 少しだけそう思った。
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