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「次はピンクね」 私が一番苦手な色。 彼がゆっくりあてると泉さんが声をあげた。 「やっぱり結華ちゃんピンク似合うよ!」 苦手な色を似合うと言われても複雑すぎる。 「冬谷、スプリング」 「はい」 今度はやたら分厚い生地を持ってきた。 「これは全部、スプリングの色。でも全部が全部似合うわけじゃないから」 そう言って、また生地をあてていく。 私自身はどれが似合うかなんてさっぱりだけど、彼と泉さんは納得しながら、うんうんと頷き、なんだか楽しそうだ。 もう一度サマーの生地をあてて終わった。 まれに三つのカラーを持っている人がいるけど、私は比較的分かりやすかったみたいだ。 「じゃあ、改めて」 「神白結華さんはスプリング・サマーです」 「特にこのピンクが凄く似合ってたよ! ベストカラーはこれね」 泉さんが言った色をボードで見てみると、さっきも似合うと連呼していた色だった。 「……マジ?」 「うん、マジ」 ポカーンとしていると、席を外していた杏さんが戻ってきていた。 「結華チャンお疲れ。どうだった?」 「……なんか、認めたくない現実が」 「ベストカラーは?」 「コーラルピンクですね」 「じゃあ結華チャン、大変身できるね。今度一緒に買い物行きましょ」 ニッコリ微笑まれ、暗にピンクの服を買いに行きましょうって言われていて笑うしかなかった。
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