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まるで今気づいたみたい。
「ああ」
ようやく解放された腕。
顔を見ることなく試着室に入って着替える。
こんな不愉快な思いをするなんて思わなかった。
さっさと会計を済まして店を出よう。
カーテンをあけて接客してくれたお姉さんの元に行く。
視界の隅に男の姿が写ったけど、もう口は聞きたくない。
会計してる最中に、お姉さんが何か言いたげだった。自分が接客したお客が揉めたりしないか心配なんだろうか。
「お騒がせしてすみません」
一応、詫びておく。
原因は間違いなくアイツだと言いたいが我慢だ。
「あ、いえ」
商品を受け取って早々に出口に向かった。
何故かアイツまでいて俯きがちになる。
「今度それ着て遊びにきてよ」
出口近くで足が止まる。
「……また似合ってないって言うつもり?」
「さあ?」
「生憎だけど、もう会うことはないですね。てか、会いたくないんで」
「それは光栄だね。でもさ君さっき"また"って言ったよね?」
「言葉のあやです」
「そ。でもきっとまた会うことになるよ」
どこからくる自信だろうか。思わず呆れて溜め息がでた。
「私はあなたの連絡先どころか名前も知らないのにどうやって会うっていうのよ」
「それじゃ名前教えて」
ついでのような軽さにイライラする。
顔が良くても性格がこんなんじゃ一緒にいたくもない。
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