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「……ベストカラーがピンク?」 思わずもう一度聞いてしまう。 「うん。間違いないね」 泉さんが自信たっぷりに頷いた。 「……買い物、付き合ってくださいね」 半ば諦めてそう言っていた。 やっぱり、この人達には敵わないなと思った。 「もちろん、喜んで付き合うよ。まぁその時はプラスアルファは考えといてね」 「……まぁ、そうなったらなったで成り行きに任せます」 苦笑しながら答えると、杏さんからお呼びがかかった。 「結華チャン、こっち来て。最後の仕上げよ」 「仕上げ?」 さっきのメイク台の前に座るよう促された。 たくさんの筆と綺麗な色合いのリップやアイカラー。 「翼から聞いてない? 最後はベストカラーを取り入れたメイクをして綺麗になって帰ってもらうの」 そう言えば、そんなことも言っていた気がする。 「……なんか、杏さんいつも以上に楽しそうじゃありません?」 笑顔が素敵な杏さんが、さらにキラキラしている。 「私ね、可愛い女の子がメイクでさらに綺麗になるのがたまらなく好きなの! 結華チャンって化粧映えすると思うから腕がなるわ」 本当に楽しそう。 泉さんと彼は慣れている感じで受け流している。 「安心していいぞ、結華。手先は器用だから」 「翼、言い方が失礼よ」 「杏さんってメイクもむちゃくちゃ上手いんだよ。先生もこればっかりは苦手だし」 「うるせーよ」 「お願いしまーす」 慣れとは怖いもので、私も多少は免疫がついたみたい。
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