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「したいの?」
「いや、まだいいです」
聞かれた質問にほぼ即答だった。
「結婚は修行の毎日よ。好きで一緒になっても所詮は他人。ぶつかることも多いし気を遣うのも旦那だけじゃないしね」
そうか、お姑さんとも上手く付き合っていかないといけないんだ。
「して良かったと思います?」
「良かったとは思ってるよ。傍に居てくれる人がいる。それだけで、凄く安心するの。ただ私の場合は子供がいないから母親っていうのがまだよく分からないわね」
手を休ませることなく、器用に話しながら動く手を私はただ黙って見ていた。
「結婚はタイミングと勢いって言うけど、今考えれば本当にそうかも。でも、私はほぼ翼のおかげなんだけどね」
「どういう意味ですか?」
「人間だからって言ってしまえばそれまでだけど、例えば、私がスプリング・サマーで、旦那がオータム・ウィンターだったら結華チャンはどう思う?」
チラリとボードを見て、配置的に考える。
彼に明度や彩度と言われても正直、あんまり分からない。
分からないなりに、ただ思ったのは。
「……正反対のカラー」
「正解。カラーにも大体な性格があるのを聞いたよね。全く違うカラーだからお互いを理解できない時がある。それを受け止めて、尚且つ相手がどうしたいのかどうして欲しいのか考えるの」
「彼が間に入ったんですよね?」
「うん。あ、例えばだから実際は違うからね。私もカラー勉強したから」
自分のカラーを知ってから、相手のカラーが気になる。
「杏さんのカラーは?」
「なんだと思う?」
予想外な返答に、ただ感覚だけで答えてみる。
「スプリング……ウィンター?」
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