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「カラー見てもらったからもう大丈夫よね?」 「買い物にも行くし平気ですよ」 ニッコリと聞こえてきそうなまでの笑顔で、杏さんと泉さんが私に笑いかける。 「アハハ」 笑ってふたりの視線からそらしてしまう。 自宅のクローゼットを思い返してみても、モノトーンの服ばかり。 買い物に付き合ってくれと頼んだものの、実際に着るにはかなり勇気がいる。 モノクロの中、ひとつだけ鮮やかに映えるワンピース。 彼の思惑通りか、近いうちに着ることになりそう。 「まぁ最初は勇気いるよね。今まで着てなかったなら尚更。まずは小物から始めてみる?」 「小物って?」 「ストールとかポーチかな。アクセサリーもシルバーからピンクゴールドにしてみるとかね」 「……ピンクゴールドもあんまり好きじゃ、ない、です」 「少しずつでいいのよ。ねぇ翼?」 「あぁ。でもカラーを取り入れてみるのも結華次第だ」 賭けてみた。 どう変われるのか、試してみたかった。 気に入らなくて、納得できないものなら料金だって一円も払うつもりはなかった。 そして、匠さんが以前言っていたとっておきの意味がようやく分かった。 カラーはきっかけ。 女の子は少しの手間や何かを変えたり、意識しただけで変われることができるのだと。 普段の生活では分からない、変化した未知の自分。 変われるなら変わりたい。
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