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「ご飯も買い物にも行くじゃないですか」 「……そーだけどさぁ」 シュンとしてしまった様は年上とは思えない可愛さだ。 「えーと、じゃあ私が休みで用事がなかったら、お昼休みにでも来ていいですか?」 妥協案として提案した私に、杏さんは花がブワッと勢いよく咲いたように笑顔になった。 「来るときは連絡してね!」 「はい」 「……いいのか?」 「私も杏さんたちともっと話したかったから大丈夫です」 「先生、良かったですね」 「……何が?」 それには答えずに、減ってしまった紅茶を足してくれた。 「次に来るときは、噂のワンピースお願いね」 笑顔で釘をさされた。 「先生が選んだなら大丈夫よ、結華ちゃん」 「……頑張ります」 「そろそろ暗くなってくるし駅まで送るよ」 「え、別にいいですよ」 「いいから」 ジャケットを取りに行ったようで、部屋に女三人だけになる。 「まだ全然明るいほうだと思いますけど」 「少しでも一緒にいたいって、翼は言ってんの」 「なんだかんだで、私と杏さんばっかり結華ちゃんに絡んでましたからね」 「今まで結華チャンのこと黙ってた報いよ」 「なんで言う必要があるんだよ」 いつの間にか、ジャケットを羽織って扉に寄りかかって待っていた。 「義姉だからよ」 当然でしょうと杏さんの満面の笑みがそう言っていた。
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